icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻11号

1987年11月発行

文献概要

研究と報告

Capgras症候群を呈した脳血管性痴呆の1例

著者: 一ノ渡尚道1 立花正一1 辰沼利彦1

所属機関: 1防衛医科大学校精神科学教室

ページ範囲:P.1195 - P.1202

文献購入ページに移動
 抄録 幻覚とせん妄を伴った脳血管性痴呆の72歳の女性が,治療の過程でCapgras症候群およびその類縁症状を呈した1例を報告した。本症例のCapgras症状とその類縁症状は,脳器質障害に基づく認識能力の低下を背景として,それに心的・生活状況的要因が深く関与して発現したものと考えられた。特に,本症状成立の心的機序として,嫉妬妄想の存在が重要と考えられた。つまり,嫉妬妄想状態のもとで生じた夫への愛憎葛藤,嫁に対する激しい憎悪の感情が,夫を対象としたCapgras症状と,嫁の存在の妄想的否認の成立への最も重要な役割を果たしたものと推察された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?