研究と報告
慢性精神分裂病の臨床的特徴と抗精神病薬に対する反応性—重症群と軽症群の比較
著者:
堀彰1
永山素男12
高橋信介1
関根義夫1
島田均1
明石俊男1
大久保健1
宮崎知博1
渡辺実1
有馬邦正1
原重幸1
西村隆夫1
嶋崎加代子1
石井澄和2
島薗安雄3
所属機関:
1国立精神・神経センター武蔵病院精神科
2国立精神・神経センター武蔵病院精神科臨床検査部
3国立精神・神経センター
ページ範囲:P.1203 - P.1210
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抄録 昭和30年から45年の間に発病し,現在50歳以下の精神分裂病患者のうち,最近3年以上,継続入院している「重症群」(50例)と,最近3年以上入院したことがない「軽症群」(35例)について比較検討した。1)両群は九大式精神症状評価尺度得点,三大学法行動評価表得点,罹病期間に対する入院期間の比,転帰において有意の差を示した。2)九大式精神症状評価尺度項目を因子分析し,3つの因子を得た。第1因子は情意鈍麻,思路障害,病識欠如などに高い負荷を示し,その得点は重症群で有意に高く,臨床的重症度を最もよく反映していると考えられた。第2因子は幻覚と妄想に高い負荷を示した。3)重症群は軽症群より有意に多量の抗精神病薬を投与され,血中抗精神病薬濃度も高値であった。すなわち,重症群は抗精神病薬を投与されているにもかかわらず,精神症状の改善しない難治患者群と考えられた。4)重症群の血清prolactin濃度は上昇しており,軽症群より高い(男性)か差がなく(女性),両群でD-2受容体の反応性には著しい差はないと推定された。