研究と報告
Carbamazepineの躁病,非定型精神病,精神分裂病に対する治療効果
著者:
大熊輝雄12
山下格3
高橋良4
伊藤斉5
栗原雅直6
大月三郎7
渡辺昌祐8
更井啓介9
挾間秀文10
稲永和豊11
所属機関:
1東北大学医学部精神医学教室
2国立精神・神経センター武蔵病院
3北海道大学医学部精神医学教室
4東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室
5慶応義塾大学医学部精神神経科教室
6虎の門病院精神科
7岡山大学医学部神経精神科教室
8川崎医科大学精神医学教室
9広島大学医学部神経精神科教室
10鳥取大学医学部神経精神科教室
11久留米大学医学部精神神経科教室
ページ範囲:P.1211 - P.1226
文献購入ページに移動
抄録 Carbamazepineをopen trialによって内因性躁病105例,非定型精神病44例,精神分裂病77例に使用し,その臨床効果を検討した。最終全般改善度が中等度改善以上であった症例は躁うつ病68.6%,非定型精神病63.6%,精神分裂病55.8%であった。有効例では効果の発現は速やかで1〜2週目までになんらかの改善が認められた。臨床精神薬理研究会評価尺度(CPRG)によって評価された躁症状は各疾患とも有意に改善し,基本気分,精神運動性,話し方と音声,睡眠障害で改善が著しかった。非定型精神病と精神分裂病について行ったBPRSによる評価では,感情面・欲動面に関する症状の改善,特に興奮の改善が目立った。最高投与量が300〜600mg/日の症例で効果が大きかった。炭酸リチウムや抗精神病薬の効果が不十分な例にも奏効する場合があった。有効例と無効例との間に血中濃度の差はなく,反応者と非反応者の存在が推定された。副作用は106例に,臨床検査値異常は45例にみられ,18例で投薬が中止された。