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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻12号

1987年12月発行

文献概要

特集 躁うつ病とセロトニン

躁うつ病とセロトニン—その歴史と現状

著者: 更井啓介1

所属機関: 1広島大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.1255 - P.1261

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Ⅰ.研究上の難点
 躁うつ病の生物学的研究を行う上で,まず考えなければならぬ点について少し述べる。第1は対象となる患者が果して生物学的に均質かどうか不明な点である。つまり,現在用いられている診断基準が必ずしも明確ではなく,対象が不均一になるおそれがある。たとえば,操作的に行うDSM-Ⅲ2)を適用した場合に,原因分類で言うと従来抑うつ神経症とされたものでも,患者がそれらの症状が2週間以上,続いて存在すると主張すれば,大うつ病とされるこがある。逆に遺伝負因が明かで,周期的に繰り返しうつ病相を来たしていた人でも,病相期によっては,症状の数がやゝ少く,気分変調性障害としなければならぬときもある。むしろ,DSM-Ⅲより2項目多くて,より重症なものが選択できるRDC42)(精神医学研究用診断基準)を用いたほうが,より均質な対象を得ることができそうである。
 第2に異種性がある。最近の遺伝学的研究9,14,22)によれば躁うつ病には異種性が見出されており,躁うつ病は医学的には類似の症状を示す症候群として理解すべきである。従ってそのような対象に関する生物学的研究は,成績が一致しなくても驚くには当らない。それぞれ,遺伝子の異常が明らかなグループについて,異常な成績が出されれば特異的所見となりうるであろうが,そのような所見はまだ出されていない。現時点では臨床的に双極型と単極型に分類される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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