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巻頭言
心理臨床
著者: 岡田敬蔵1
所属機関: 1藤沢病院
ページ範囲:P.126 - P.127
文献購入ページに移動私は,わが国において,心理臨床という言葉が定着してきたことを,心理面に悩み,問題をもつ人々のための,心理学的アプローチによる臨床的実践という困難な業務に従う方々の主体性をたかめ,その専門性を明確にしようとするものとして高く評価したい。現在わが国の心理臨床家(医療関係については後述する)は,児童相談所,教育相談所,大学における学生相談室,精神薄弱者等の福祉関連施設,家庭裁判所,鑑別所,少年院などで活動し,また大企業の保健室で「カウンセラー」として働く方など,広汎な領域で活動しており,今後,わが国の精神保健活動の重要な一翼を荷うべきである。この中で,家庭裁判所調査官のように,身分も安定し,現場に入ってからの組織的な研修計画が充実しているところもあるが,多くの職場では,身分も不安定で,勉強する機会にも恵まれず,孤立している。幸い,全国の諸地域において,大学,研究所などを拠点として,精神療法に関心をもつ精神科医も加わっての勉強サークルが生れつつあり,関係者の献身的努力に感謝したい。また,心理療法・心理相談の私的開業にいどむ方も現われてきた。精神科クリニックを訪れるときのような抵抗感は少ないといえようが,そこでの経験を持ち寄って,そのあるべき形態について論議されねばならないであろう。
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