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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻3号

1987年03月発行

研究と報告

ガンゼル症候群を示した9歳女児例

著者: 野本文幸1 横田正夫1 高橋隆一1 奥寺崇1 中屋みな子1

所属機関: 1群馬大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.293 - P.299

文献概要

 抄録 今回筆者らは小児期には稀であるガンゼル症候群を示した解離ヒステリーの9歳女児例を経験した。本例では準備状態に骨端症が,症状悪化に薬物性肝障害がそれぞれ深く関与し,それまで「自分は何でもできる」という自我像をもっていた患児が生まれて初めての深刻な挫折を体験する背景となった。そして,患児の年齢では本来できないことになっていたのを無理を通してやらせてもらった"役"を遂行できなかったという失敗が結実因子となり,優等生であった患児の立場,自我像を根本的に揺るがせて人格的危機に陥し入れ,極期には解離ヒステリーの病像を呈した。この状態においてVorbeiredenとVorbeischreibenを示し,また抗不安薬の離脱症状と考えられるけいれん発作を起こし,その前後から病状が快方に向かった。治癒過程において患児は自ら絵画を描き始めるが,この描画が一度は崩壊してしまった自我像を再構築するための重要な治療的役割を果たしたと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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