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抄録 最近3年間にせん妄の診断のなされた125例を老年群79例と非老年群46例に分け,老年群のせん妄状態の臨床的特微を検討した。せん妄の基礎疾患は,非老年群では,生命にかかわるような重篤な基礎疾患が多かった。老年群では,非老年群のような重篤な基礎疾患を持たなくても,軽微な基礎疾患を背景に精神的誘因が重なり,せん妄が生じやすい傾向がみられた。さらに,老年群のせん妄を対象とした脳CT上の脳萎縮は,画像解析によって対照群に比し有意の脳萎縮の進行を示した。この脳萎縮は軽度のものであるが,老年群に多くみられた視聴覚障害とあわせて,せん妄発現の準備状態として重要な要素であると考えられた。またせん妄発症6カ月後の予後を調査すると,37例は30%死亡していた。さらに,老年群のせん妄患者では27例34%に痴呆症状を認めた。
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