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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻5号

1987年05月発行

文献概要

研究と報告

眼疾患に伴う幻視について—Charles Bonnet症候群の1例

著者: 田崎博一1 渡辺俊三1 佐藤時治郎1 小田桐正孝2 一戸敏3

所属機関: 1弘前大学医学部神経精神科 2青森市民病院精神科 3弘前大学医学部眼科

ページ範囲:P.509 - P.513

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 抄録 眼疾患による視力障害に伴って幻視を呈した症例を報告し,幻視出現の機構について考察を加えた。症例は67歳の女性で,両側の白内障,および網脈絡膜の変性による視力障害を基礎疾患とし,眼科での入院,検査を契機に幻視が出現した。幻視は意識清明時にみられ,色彩に富み,内容は多種多様で,大きさ,形,数,位置を変化させ,また,視力障害の強い左眼でより優勢で,閉眼により増強した。病的な体験であることの自覚は保たれており,約1年間にわたり持続している。これらは,これまでCharles Bonnet症候群として報告されてきた一群の病態の示す特徴によく一致していた。幻視の発現に関して眼疾患自体の作用,それに伴う感覚遮断の状況,視覚系における解放現象,視力障害に対する不安などの心理的因子,中枢性の機能障害などのいくつかの要因が関与しているものと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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