研究と報告
精神分裂病様の精神症状を呈したWerner症候群の3例
著者:
窪田孝1
地引逸亀1
山口成良1
所属機関:
1金沢大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.617 - P.624
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抄録 全身の結合組織など外胚葉性起源器官の若年性老人様変化を主要症状とするWerner症候群で,精神分裂病様の幻覚妄想状態を呈した3例を報告し,さらに過去に報告された症例を参照し,その精神症状につき考察した。精神症状は慢性の脳器質性精神障害にみられる脳器質性人格変化と外因性妄想幻覚症状群の特徴を示し,検査では発症後の知的機能の低下,脳波上全般性の徐波化,CTスキャンによる軽度脳萎縮など慢性進行性の脳萎縮性変性疾患を示唆する所見が得られた。これらより本症候群は発症から数十年にわたる経過中に,性格変化から分裂病様の幻覚妄想状態,さらに急性外因反応型まで種種の多彩な精神症状を呈する脳器質性精神障害であることを示した。また本症候群の性格特徴は,周囲に対する不信感,被害念慮,他人との暖かい接触性の欠如など妄想性人格障害の特徴とほぼ一致しており,本症候群に特有な性格変化と考えられ,本症候群の幻覚妄想の形成上重要な役割を演ずることを示唆した。