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研究と報告
旅行精神病について
著者: 福田一彦1
所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.691 - P.695
文献購入ページに移動 抄録 旅行精神病の2例を報告した。1例は49歳,男性で,欧州に8カ月滞在中,注察,被害,追跡妄想,幻聴が出現し,欧州の数カ所の空港を俳徊し,抑うつ的となり,自殺を図ったところを保護された。帰国後1カ月ほどで回復した。他の1例は41歳,女性で,東北新幹線で東京から東北本線の某駅に向う途中,追跡妄想,幻聴が出現し,意識がもうろうとなって,タクシーで徘徊中に保護された。入院して数日で落着いた。Nilsson(1966)は外国旅行中に起こる精神障害を旅行精神病と呼んだが,国内旅行でも起こると考えられる。孤立感を抱き易い性格や出発前の生活上の葛藤から急激な妄想反応を呈するに到る。病因として病前性格,孤立感,疲労,不眠,心理葛藤が考えられる。旅行精神病は精神障害者の旅行とは異なるが,移民,外国人留学生,聾者の精神疾患と多少とも共通する心理機制と症状を有する。
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