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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻8号

1987年08月発行

文献概要

研究と報告

リチウム服用者の糖代謝

著者: 前田潔1 谷本健士1 寺田照久1 金田弘幸1 柿木達也1 新谷猛1 後藤康生2

所属機関: 1神戸大学医学部精神神経科 2兵庫県立塚口病院内科

ページ範囲:P.883 - P.887

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 抄録 われわれは偶然,リチウム(Li)の服用前後数年間,毎年繰り返しぶどう糖負荷試験(GTT)をうけ,その間に耐糖能の低下をきたした症例を経験した。そこで種々の期間,Liを服用している患者の糖代謝につき,空腹時血糖(FBG),グリコヘモグロビン(HbAl,HbAlc),及びGTTを行って検討を加えた。対象は22歳から62歳(平均38.4歳)の23例(男15例,女8例)で,その平均Li服用期間は2.5年,服用量は400〜1,200mg,血清濃度は0.3〜1.3mEq/l(平均0.66mEq/l)であった。そのうち糖代謝異常を呈したのは2例であった。この2例はいずれも男性で47歳と62歳と糖尿病好発年齢であり,1例には糖尿病の家族歴があった。他の21例では,むしろLi服用期間が永くなるにつれて,HbAl及びHbAlcは改善する傾向にあった。また,同一症例で一定期間をおき,繰り返し行ったGTTでも変化はなかった。以上の結果からLiが糖代謝に重大な影響を及ぼす可能性は少ないと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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