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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻9号

1987年09月発行

文献概要

巻頭言

科学者と創造性

著者: 横井晋1

所属機関: 1前・横浜市大精神科

ページ範囲:P.916 - P.917

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 創造性といわれるものは芸術において最も顕著に現われる。ゲーテが詩と真実の中で「野を行き森を行き,わが歌を笛に吹きてかくてひねもす暮しぬ」と書いた時,外部と内部の自然が呼応して詩が生れ,これはいはば自我意識のない宇宙とのリズムの調和の中から出現している。この第1の創造性に対し第2のものは,企図の下に行われるもので,その企図は内及び外の自然を研究し,それを模倣して自然に近いものを創り出す行為である。それは松の事は松に習え,造化に従い造化に還れと述べた芭蕉の俳句の態度と一致する。
 人間には動物とも共通する模倣衝動があって,ある印象が引金となって真似をする,例えば小さな子は兄や姉の行為を真似する。しかし人は動物と違ってそれを変形し独特なものにするという精神的強調が強いのである。この自然を模倣しようとする過程は,創作を目指す意志の支配に意志的に服している姿である。しかしこれは一般の意志行為,例えば政治家,経営者,記録を目ざす走者等の意志とは全く異なるもので,芸術家の場合は作品をめざす意志に支配されつつ,同時にこれを抹消しなければならぬという矛盾を切り抜けなければならない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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