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文献詳細

雑誌文献

精神医学3巻1号

1961年01月発行

研究と報告

Tofranilによる躁状態の治療

著者: 町山幸輝1

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.77 - P.82

文献概要

 新しい向精神薬Tofranilが種々のうつ状態,特に内因性うつ病に対して顕著な治療的効果を有することはすでに多くの臨床経験によつて確立された事実である。1957年スイスのKuhn1)が最初にこの薬剤の効果を報告して以来,今日まで多くの研究者がその効果を確認している。しかし,それら多くの研究者による本薬剤のうつ状態に対する画期的な効果の報告にもかかわらず,この薬剤を躁状態の治療にもちいたこころみは現在までのところまだ報告されていないようである。
 1958年に本薬剤を臨床的に試用する機会にめぐまれて以来,われわれはうつ状態を主とする種々の疾患の治療にこの薬剤を使用した。最初の1年間,われわれは本薬剤をうつ状態の治療にもちい,顕著な治療成績をあげたのであるが,その間の経験において,われわれはこの薬剤の感情に対する特異的な調整作用に注目させられた。Tofranilのうつ状態に対する著しい効果はその中枢に対する単なる刺激作用,あるいは多幸化作用によるものとはかんがえがたい。それは抑うつ患者の異常に低下した水準の感情に一次的に作用し,それを中立化することにより,あるいはそれを正常の水準までひきあげることにより,患者を治癒の状態にもたらすのであるとおもわれる。Tofranilがうつ状態の治療でしめした感情調整の特異的作用をかんがえると,この薬剤が躁状態における感情の高揚にもなんらかの作用をもつのではないかという疑問がおこつてきた。そこでわれわれは本薬剤を躁状態の治療にこころみることにしたのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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