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文献詳細

雑誌文献

精神医学3巻12号

1961年12月発行

特集 非定型内因性精神病

非定型精神病の臨床生化学的研究—いわゆる周期性精神病の内分泌学的研究

著者: 鳩谷龍

ページ範囲:P.1005 - P.1016

文献概要

 いわゆる内因性精神病の示す病像をその心的機能の解体の様式にしたがつて,第1図のごとく,急性形式のものを左辺に,慢性形式のものを右辺に,また心的水準低下の軽度なものから高度なものへと上下に配置すると,てんかん的解体様式と分裂病的解体様式とは対極をなすといえる。
 すなわちてんかん性大発作においては,瞬間にして,全身けいれんとともに意識喪失し,ほとんど死の境まで転落するが,ふたたび急速に蘇生する。それは人間の自由性の介入を許さないまつたく画一的な現象である。これに対して,いわゆる定型分裂病においては,人格そのものの病態が問題であり,長年月の経過の中に分裂病的人格変化が進行するが,そのさい,個人の生活史的意味連関が症状内容を規定しつつ,病塑的に関与する。この2つの極の間に,周期性あるいは位相性の経過をとり,しかも一般に人格の持続的障害を示さない精神病群が布置されるが,定型的躁うつ病にあつては心的水準の低下がいちじるしくない点が特徴的である。われわれがここに非定型精神病として把握している疾患群は,病像のうえから躁うつ病的段階よりも心的水準低下の高度な病像を示し,またてんかんの精神発作や分裂病にみられる緊張病性症候群と境を接しており,症候学的にもこの3つの病圏の周辺域に位するといえよう。一般に心的機能の解体が急激かつ深刻であるほど,意識障害が高度で,病像は超個人的となり,生物学的要因によつてより直接的に規定されるといえる。したがつててんかんとともに,本疾患群のごとく急性病像を示し,周期性経過をとる疾患群の身体病理を明らかにすることは精神医学の重要な課題といわねばならない。この意味においてわれわれは本疾患群の中でもとくに周期的発病の顕著なものを対象として,臨床経過に沿つて継時的に,主として内分泌的homeostasisの動態を追求することから始めた。つぎに2,3の症例を示そう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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