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てんかん—治療と予後
著者: 田椽修治1 後藤蓉子1 徳田良仁1
所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.89 - P.96
文献購入ページに移動てんかんは慢性難治の疾患であるため,その治療にも古来考えられるありとあらゆる方法がこころみられてきた。すでにHippokratesやGalenの時代から,てんかんの本態に関する臆測とともに種々な治療法が記載されており,その中には脱水療法のように多少合理的なものもあつたにせよ,こんにちわれわれが実際に応用できるものは何もない。中世紀には,半ば迷信的な草根木皮のたくいがもつぱら用いられたのも,洋の東西に共通したことであつた。たとえば1世紀前後から賞用された寄生木は,檞の木に固着して顛落しないので,Fallsucht(falling sickness)とよばれたてんかんに奏効するであろうという理由から,その後2000年近くの間慢然と慣用されてきたのである。
てんかんの近代的な薬物療法としてまず最初に登場したのは,1857年Locockによつて見出された臭素剤であるが,これは抗けいれん作用もそれほど強力でなく,副作用もあるので,最近ではほとんど顧みられなくなつた。
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