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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

家族全成員に発病した精神分裂病の1家系例

著者: 融道男1 小林暉佳1 高橋良2 石井清3

所属機関: 1芹香院 2東京医科歯科大学神経精神医学教室 3鎌倉脳病院

ページ範囲:P.147 - P.152

I.はじめに
 精神分裂病の遺伝生物学的研究は,さまざまなかたちで進められているが,ひとつの興味ぶかい方法は,両親がともに分裂病者の家系についてのSchulz, B. 13),Elsasser, G. 4)らの報告である。ElsasserはKahn, E.,Schulzの集めた症例のうち,非定型分裂病および診断の不確かなものをのぞいて自己の統計に加え,分裂病両親の子供の,分裂病に対する罹病危険率を39.2%とした。
 われわれの症例は,現存の家族5人が,すべて分裂病と診断されており,調査の結果,死亡した父親も分裂病であつたと推定され,この疾患が1家族全成員に発したという例であつて,このような例はSchulz,Elsasserの各症例をみても,子供が1人で両親と計3人の家族が分裂病者である2家系例以外には見出すことができない。
 わが国では,最近社会心理学的立場から1家系例が発表されている7)が,このような例はきわめてまれなものと思われるので,調査しえた範囲を報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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