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研究と報告
3才5ヵ月の幼児にみられた心因性無言症の1例
著者: 正橋剛二1 矢後章三1 熊田智彦1
所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.493 - P.497
文献購入ページに移動 3才5ヵ月の男児(第1子)で,ある種の驚愕を直接の契機として症状を発し,約1ヵ月間にわ允つて完全な無言状態をたもつた1例を経験し,以後1ヵ年間にわたつて経過を観察した。
その生育史の分析と臨床症状の観察から,本症例は環境における葛藤に基因し,心因性に発病し『たものと考えられた。すなわち,患児の1才8ヵ月のときに妹が出生し,これと関連して母親の態度に極端な変化(屈従・過保護的から冷淡・拒否的へ)が示され,患児には情緒的不安定状態が準備されていた。このころ偶然発生した爆発音を契機として驚愕反応が誘発され,ひき続き無言状態におちいつたものである。症状は単一的でほかの随伴症状をほとんど認めなかつた。第10病日に入院し,母子関係の調整をはかり,児童に対しては主として遊戯療法を行なつた。第30病日よりしだいに自発言語を回復し,2ヵ月後に退院した。退院後の観察では,性格的なかたよりと退行を示し,母依存的な傾向があり,一時夜尿を認めた。しかしその後も面接を続け,退院後9ヵ月ごろからはしだいに独立的となり,社会化が進み,夜尿も改善された。
この患児の鑑別診断,症状発現の要因と症状とし,無言症を発現した心理機制の考察を行なつた。
その生育史の分析と臨床症状の観察から,本症例は環境における葛藤に基因し,心因性に発病し『たものと考えられた。すなわち,患児の1才8ヵ月のときに妹が出生し,これと関連して母親の態度に極端な変化(屈従・過保護的から冷淡・拒否的へ)が示され,患児には情緒的不安定状態が準備されていた。このころ偶然発生した爆発音を契機として驚愕反応が誘発され,ひき続き無言状態におちいつたものである。症状は単一的でほかの随伴症状をほとんど認めなかつた。第10病日に入院し,母子関係の調整をはかり,児童に対しては主として遊戯療法を行なつた。第30病日よりしだいに自発言語を回復し,2ヵ月後に退院した。退院後の観察では,性格的なかたよりと退行を示し,母依存的な傾向があり,一時夜尿を認めた。しかしその後も面接を続け,退院後9ヵ月ごろからはしだいに独立的となり,社会化が進み,夜尿も改善された。
この患児の鑑別診断,症状発現の要因と症状とし,無言症を発現した心理機制の考察を行なつた。
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