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文献詳細

雑誌文献

精神医学3巻7号

1961年07月発行

研究と報告

Thioproperazineの臨床経験

著者: 井上令一1 山口昭平1 鎌田祐子1 岡田功1 篠崎哲郎1 桑村智久1

所属機関: 1順大医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.629 - P.639

文献概要

1.まえがき
 LaboritによるLargactil(Chlorpromazine)が精神病の治療に導入されてこのかた,これらChlorpromazineを含む一連のPhenothiazine系の誘導体によつて,精神病とくに精神分裂病の処遇に新しい面がひらかれたことはいまさらいうまでもない。しかも,これら一連の誘導体は,その結合基を異にするにつれて薬効のニュアンスを異にすることもまた知られており,臨床的にもこれら薬物を使いわけようという動きがあることは熟知のごとくである。われわれがここにとりあげるThioproperazineは,同じくPhenothiazine系誘導体の系列に属するものである。その構造式は下図のごとくである。
 すなわち,その構造式は,Chlorpromazineに比t,鎮静的な効果は2〜3倍弱いが,制吐作用においては,これに数倍するといわれるProchlorperazineに似ている。異るところはただClの代りにSulfonamide基がついている点である。Thioproperazineは,他種のPhenothiazine系誘導体に比して,いろいろの特色を示すことが知られている。たとえば,毒性はChlorpromazineより弱いばかりでなく,一般薬理作用もまた,Chlorpromazineとはいちじるしく異るとされている。すなわち,血圧降下作用や抗アドレナリン作用は弱く,抗ヒスタミン作用,体温降下作用もほとんどみられないといわれる。エーテル麻酔の強化作用もChlorpromazineに比しはるかに弱いが,犬における制吐作用は,ChlorpromazineはもとよりProchlorperazineに比してもはるかに強力である。さらに動物実験ではPerphenazineとともに,ChlorpromazineならびにProchlorperazineに比しはるかに少量で,運動不能およびカタレプシーを発現せしめるといわれている。われわれは,本剤が後述のようにDelay1)やDenber2)3)らによつて慢性の精神分裂病にしばしば効果を示すことがいわれているので,主としてこれらの点についての臨床的検討をこころみた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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