文献詳細
研究と報告
文献概要
抄録 19歳から精神症状がみられ,3年間経過を観察している眼皮膚白皮症の女子例を報告した。予備校在学中に追跡妄想,関係妄想が発現し,さらに誇大的意味づけなどの異常体験へと発展したが,妄想の中心となったのはカプグラ症状であった。患者は自分の持つ身体障害について様々な解釈をこころみ,障害を克服すべく奇異な努力を行った。カプグラ症状は他者および自分自身を対象にしたもので,自らの病気に対する空想的態度に加えて,高度の視覚障害のため部分的手がかりから対人認知を行っていたことと関係するものと考えられた。さらに白皮症における精神医学的問題を論じている文献について概説した。心理的側面に注目した報告は少ないが,本症が幾多の社会的な問題を持つことから,眼・皮膚症状のみならず精神医学的立場からの配慮が必要である。
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