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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻1号

1988年01月発行

文献概要

研究と報告

バルプロ酸ナトリウム追加による慢性高アンモニア性脳症の1例

著者: 土井永史1 益子茂1

所属機関: 1都立松沢病院精神科

ページ範囲:P.83 - P.90

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 抄録 多剤併用中のてんかん患者で,バルプロ酸追加後,嘔吐・イレウスなどの消化器症状が出現し,その増量により,覚醒水準低下・筋硬直・振戦・四肢末端の冷感・顔面ミオクローヌスなどの精神神経症状が徐々に増強した症例について報告した。この時,血中ではアンモニアが異常高値,BUNとグルタミンが低値を,髄液中ではアンモニアとグルタミンが異常高値を示し,脳波上δ波が前頭部優位に多量に出現していた。バルプロ酸中止後,血中アンモニア濃度は急速に正常化し,上記症状と検査所見は比較的速やかに改善した。
 本症例は,バルプロ酸追加に起因する慢性高アンモニア性脳症が,その増量により顕在化したものと考えられた。バルプロ酸による高アンモニア血症の発現には,アンモニアの代謝障害と産生亢進の2つの機序が同時に関与する可能性が示唆された。最後に,抗てんかん薬投与中に見られる慢性高アンモニア性脳症の臨床的意義について考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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