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研究と報告
自験9例に基づく共生幼児精神病(Mahler)概念の検討
著者: 栗田広12
所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所 2前東京都精神医学総合研究所
ページ範囲:P.1073 - P.1079
文献購入ページに移動 抄録 Mahlerの共生幼児精神病の記載に合致する自験例9例を報告した。全例とも,有意味語の消失あるいは対人反応の障害の出現,通常の幼児のような自然さのない母からの分離に対する強迫的な不安を中心とする不安状態の出現,で特徴づけられる精神発達の退行を1〜4歳に呈した。全例とも退行現象発症前の発達は正常とは言いがたく,なんらかの脆弱性を有していたと思われる。臨床診断としてはDSM-Ⅲでは,幼児自閉症に類似するが対人反応の障害はより軽いなど,幼児自閉症の診断基準を満たさず,非定型全般的発達障害となるが,特異的な精神発達の退行があり,ICD-9の崩壊精神病(Heller症候群)と近縁の状態とも思われる。幼児自閉症近縁の全般的発達障害の疾病分類学は未確立であり,出現頻度は極めて低いと思われるが,共生幼児精神病とされる状態の臨床症候群としての妥当性は,他の全般的発達障害のそれらとともに今後の検討課題である。
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