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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻10号

1988年10月発行

文献概要

研究と報告

慢性精神分裂病患者のAge Disorientationと記憶の時間的秩序の障害

著者: 中川敦子1 鳥居方策1 田口真源1 中川博幾1

所属機関: 1金沢医科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.1099 - P.1106

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 抄録 自己の年齢の過小評価ならびに記憶の時間的秩序という観点から分裂病者の時間的体験について検討した。慢性分裂病患者61名を対象にまず主観的年齢を調査した。次いで戦後40年にわたる報道写真を同定させたのち,一対比較法によってこれらの写真に対する記憶の時間的秩序を検索し,以下の結果を得た。(1)全体の13%にあたる8名が自己の年齢を過小評価した。(2)年齢過小評価者(D群)では実際にその年齢であった年代以降の事象が学習されていない傾向がみられ,"time stands still"という患者の時間的体験に対する推測を支持するものと思われた。(3)年齢評価が正確な者でも記憶の時間的秩序は必ずしも良好ではなく,その成績により3群に分けられた。最も不良なO1群ではD群とほぼ同等であり,最も良好なO3群では発病後の事象に対する記憶の秩序は良好であった。(4)時間的体験の障害は陰性症状の評価点と相関することが明らかにされたが,この障害の最も重症なものがD群であることが示唆された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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