icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻10号

1988年10月発行

研究と報告

うつ病患者における体温リズム異常—予報的報告

著者: 辻本哲士1 山田尚登1 下田和孝1 高橋三郎1

所属機関: 1滋賀医科大学精神医学講座

ページ範囲:P.1115 - P.1121

文献概要

 抄録 近年,うつ病患者におけるサーカディアンリズムの異常が注目されている。我々は,内因性リズムの指標として、外的環境条件に影響されにくいとされる体温のサーカディアンリズムにつき検討した。まず,5名の正常被検者の深部体温を測定し,これに基づき,臨床場面に応用可能な体温測定の方法を確立した。今回用いた深部体温は,直腸温と高い相関を有し,その代用になりうるものであるが,直腸温にみられる心理的,身体的負担が少なく,口腔温,えき下温に比べ精度が高く,かつ連続測定も可能である。患者の負担を考慮して,2日間2時間間隔の測定によっても日内リズム異常を,かなりの精度で検索することが可能であると思われた。次に,この方法に従い,うつ病患者14名の体温リズムを躁病と精神分裂病6名,および正常被検者5名の体温リズムの周期,頂点位相と比較した。最大エントロピー法(MEM)による体温周期の分析では,正常者の全例,精神分裂病患者の大多数で,著明な24時間成分が見られたのに対し,うつ病患者の70%にこれが認められなかった。しかし,長期的観察のできた患者では,抑うつ症状が軽快するに従い,24時間成分が明確となるものがあるので,うつ病の重症期に,24時間成分が消失すると結論された。最小二乗法による頂点位相の分析では,うつ病の経過による位相の前進または遅延という一定した傾向は認められなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら