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強迫神経症のうつ病近縁性についての一考察
著者: 中嶋聡1
所属機関: 1国立精神・神経センター武蔵病院
ページ範囲:P.1197 - P.1204
文献購入ページに移動 抄録 我々は,強迫症状を主症状とし,一般には強迫神経症と診断されると思われる2症例に関して,その症状の背後に観取されるうつ病的ニュアンスに注目し,これらの症例のうつ病近縁性について考察した。その結果,抑うつ気分,あるいは抑止などといった,うつ病に典型的な症状は明瞭ではなかったものの,強迫症状の発症基盤として,過去の未済,ないしは喪失という体験様式が認められた。このような体験様式は,Strausないしはvon GebsattelのいうWerdenshemmungの表現形と考えられ,この点に,これらの症例のうつ病との近縁性を求めることができるように思われた。さらに,Werdenshemmungが典型的なうつ病として現象せずに,強迫症状の形で現象した理由について,病前の人格構造との関連において考察を加え,我々の症例に認められるいわゆる「片意地の強さ」が森田の言う「精神の拮抗作用」の機制によってWerdenshemmungとの間で葛藤を起こしたものと考え,いわゆる「メランコリーの親和型性格」に基づく典型的なうつ病と対比させた。
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