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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻11号

1988年11月発行

文献概要

研究と報告

強迫神経症のうつ病近縁性についての一考察

著者: 中嶋聡1

所属機関: 1国立精神・神経センター武蔵病院

ページ範囲:P.1197 - P.1204

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 抄録 我々は,強迫症状を主症状とし,一般には強迫神経症と診断されると思われる2症例に関して,その症状の背後に観取されるうつ病的ニュアンスに注目し,これらの症例のうつ病近縁性について考察した。その結果,抑うつ気分,あるいは抑止などといった,うつ病に典型的な症状は明瞭ではなかったものの,強迫症状の発症基盤として,過去の未済,ないしは喪失という体験様式が認められた。このような体験様式は,Strausないしはvon GebsattelのいうWerdenshemmungの表現形と考えられ,この点に,これらの症例のうつ病との近縁性を求めることができるように思われた。さらに,Werdenshemmungが典型的なうつ病として現象せずに,強迫症状の形で現象した理由について,病前の人格構造との関連において考察を加え,我々の症例に認められるいわゆる「片意地の強さ」が森田の言う「精神の拮抗作用」の機制によってWerdenshemmungとの間で葛藤を起こしたものと考え,いわゆる「メランコリーの親和型性格」に基づく典型的なうつ病と対比させた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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