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短報
意識障害,低血糖,代謝性アシドーシスを呈した脳血管性痴呆の1例—ホパンテン酸カルシウム服用例
著者: 田島宣行1 矢島英雄1 斎藤典彦1 矢幅啓孝1 佐藤敬司1 三田俊夫2
所属機関: 1国立療養所南花巻病院 2岩手医科大学医学部神経精神科学講座
ページ範囲:P.1230 - P.1232
文献購入ページに移動ホパンテン酸カルシウム(以下HOPAと略)によると思われる急性脳症の報告は1983年杉本ら1)による3小児例に始まり,以来小児科領域においてHOPAと急性脳症との関係はその臨床検査成績,病理剖検の結果からReye症候群2)との関連で報告されてきた3)。しかしHOPAは現れ精神科領域においても,脳血管障害や老年痴呆などに基づく精神症状の改善薬として汎用されている薬であり,成人例においても上述の急性脳症の報告例があっても不思議ではない状況であった。そして1987年1月野日ら4)によって本邦で初めて成人例の報告がなされ,次いで田淵ら5)の臨床報告例が続いた。しかしこれらはすべて神経内科領域からの報告であって,精神科領域からの報告は少ない。今回著者らは諸家4,5)の報告とほぼ類似した臨床症状,臨床検査成績が認められたHOPA服用中の72歳の脳血管性痴呆の女性例を経験したので,その臨床経過を若干の文献的考察を加え報告する。
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