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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻11号

1988年11月発行

文献概要

シンポジウム 痴呆とパーキンソニズム

Economo型脳炎後遺症の臨床病理—他の黒核障害病との比較

著者: 石井毅1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所

ページ範囲:P.1263 - P.1268

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I.はじめに
 Economo型脳炎後遺症にみられる臨床症状はきわめて特異であり,知能の障害というより精神症状というべきものである。にもかかわらず,これを皮質下痴呆の一つとして理解しようとする考えがある12)。黒核を中心とする病変をその器質的背景としている故であろうか。この病気の臨床症状には,皮質下痴呆という概念が抱える問題点が浮彫りにされているように思われる10)
 立津17,18)はEconomo型脳炎後遺症の示す特異な精神症状の責任病巣として,黒核の変化を重親し,この症候群に“黒核症候群”の名を与えた。そして,類似の症状が日本脳炎などの黒核病変をもつ病気にもみられると述べている。しかし,Economo型脳炎後遺症の臨床症状は,日本脳炎やParkinson病のそれと似た点はあるにしても,著しく異なっているといわざるを得ない。この病気の患者の多くは被刺激性が高く,自己中心的であるばかりでなく,実際に反社会的な行動に走り,その際道徳観念の欠如と行動の抑制が失われている。このような傾向は日本脳炎後遺症やParkinson病の患者では弱いのではないかと思われる。また,病理学的にEconomo型脳炎後遺症では日本脳炎やParkinson病に比べて縫線背核や中心灰白質のグリオーゼが強いことを指摘した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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