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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻12号

1988年12月発行

文献概要

巻頭言

認知の障害と失認

著者: 鳥居方策1

所属機関: 1金沢医科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.1288 - P.1289

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 認知cognitionの障害が失認agnosiaでないことは精神科医の大部分が十分に承知しているはずであり,両者が同等でないことを強調するのは本誌のような専門誌にふさわしい論説であるとは思われない。しかし,両者の混同を少なくとも一部精神科医が犯していることは事実であり,また失認agnosiaに関しても若干の誤解があるように思われるので,あえてこのテーマについて駄文を弄してみたい。
 認知cognitionとか認知心理学cognitive psychologyとかの語が多くの専門家の間で頻繁に使用されるようになったのは比較的最近のことである。1984年にJohn Wiley社から出版されたRaymond J. Corsiniの編集による“Encyclopedia ofPsychology”の中で,Ulric Neisserの“CognitivePsychology”(1967)がこのトピックスの最初の完全なテキストとして紹介されているが,そのUlric Neisserは認知cognitionという語の意味するところを次のように述べている、「認知cognitionとは感覚性インプットが変形され,還元され,貯蔵され,再び取り出され,そして使用される過程のすべてのことである。認知cognitionは明らかに人間が行う可能性のある事柄のいずれにも関与しており,いずれの心理現象も認知現象なのである。」つまり,認知cognitionという語は上述の「心理学百科辞典」の中でN. S. Andersonが記しているように,“knowing”に含まれる心の活動ないし状態のすべてを意味することになる。また,E. R. Hilgardも認知cognitionを「“knowing”に含まれるすべての心理過程の総称」であるとしている。ちなみに,認知cognitionに含まれる具体的な心の活動としては,認知(狭義),注意,記憶,言語機能,思考(推理,判断問題解決など),その他の項目が挙げられている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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