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研究と報告
二重身体験を伴ったCotard症状群
著者: 尾久裕紀1
所属機関: 1東海大学医学部精神科
ページ範囲:P.1339 - P.1344
文献購入ページに移動 抄録 Cotard症状群に二重身体験を伴ったうつ病の1症例を報告し,症状論および成因論的考察をした。
(1)うつ病における二重身体験は稀であるが,破局状況の中で生じ,本例では自己救済と願望充足という二つの側面を含んでいた。(2)身体離人症,心気妄想と否定妄想を区別するものは「否定性」である。他方,これらの症状は,移行可能で,一定の段階を経て進行し,同時に明確な区別をすることは困難な側面をもつ。(3)うつ病は「否定性」を内含した疾患であり,そのため,うつ病における身体離人症,心気妄想は否定妄想に移行しやすく,あるいは「否定性」を含みやすい傾向をもつ。(4)本例の二重身体験と否定妄想に共通する成立機転として,苦悩,不安に対する自己防衛的側面をあげた。さらに,これら二つの現象は患者の破局的な状況を「意味変更」する役割があることを述べた。
(1)うつ病における二重身体験は稀であるが,破局状況の中で生じ,本例では自己救済と願望充足という二つの側面を含んでいた。(2)身体離人症,心気妄想と否定妄想を区別するものは「否定性」である。他方,これらの症状は,移行可能で,一定の段階を経て進行し,同時に明確な区別をすることは困難な側面をもつ。(3)うつ病は「否定性」を内含した疾患であり,そのため,うつ病における身体離人症,心気妄想は否定妄想に移行しやすく,あるいは「否定性」を含みやすい傾向をもつ。(4)本例の二重身体験と否定妄想に共通する成立機転として,苦悩,不安に対する自己防衛的側面をあげた。さらに,これら二つの現象は患者の破局的な状況を「意味変更」する役割があることを述べた。
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