icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻4号

1988年04月発行

創刊30周年記念特集 精神医学—最近の進歩 第2部

覚醒剤精神病及びその精神分裂病との関連

著者: 佐藤光源1

所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.433 - P.442

文献概要

I.はじめに
 覚醒剤精神病は少なくとも2つの大切な問題をはらんでいる。その一つは覚醒剤に関連した精神障害,つまり覚醒剤の乱用,依存,それに伴う精神病状態といった物質乱用による精神障害そのものであり,臨床の実際に直結したものである。諸外国で薬物乱用問題が深刻化し,予防や治療面での国際的な対応が急がれている現状も,その社会的な影響力の大きさを物語るものである。もう一つの問題は,覚醒剤精神病を精神分裂病モデルに見立てて行う精神分裂病の成因研究である。精神分裂病はある限られた期間における特徴的な精神症状群によって診断されることが多いが,その臨床類型,経過,転帰,治療反応性のいずれをみても,成因に生物学的な異種性があるというのが最近の一般的な考えである。精神分裂病に特徴的とされる症状項目をある程度共有する覚醒剤精神病を手がかりに,分裂病症状やその再発を説明できる脳内機序が研究されつつある。こうした研究は,諸外国に先んじて日本で活発に行われた歴史がある。なかでも立津らの臨床研究や臺らの実験的な研究—とくに『履歴現象』—は際立ったものであり,現在の研究に引き継がれている。覚醒剤精神病がもつこうした2つの側面は,そのいずれを抜きにしてもその精神医学的な意義を述べることができない。紙面の関係でそれぞれの詳細を述べることは困難であるが,ここでは両者についてこの約20年の間に得られた知見を中心にとりまとめてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら