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雑誌目次

雑誌文献

精神医学30巻5号

1988年05月発行

雑誌目次

巻頭言

いま,抗痴呆薬の開発に必要なもの

著者: 三好功峰

ページ範囲:P.490 - P.491

 近年,高齢化社会となったためか,老年期の痴呆の患者を診察する機会が急増している。それに伴って,筆者の勤務する兵庫医科大学外来でも,最近では,アルツハイマー型老年痴呆の最も初期の段階で診察する機会も多くなっている。
 治療を開始するのは,当然,初期からのほうが良いと思われるので,早期診断が必要であろう。アルツハイマー型老年痴呆は,きわめて徐々に臨床症状が明らかになる,といった発病の仕方が多いから,最も初期の段階での診断を確定するのは容易ではない。それでも近年,CT,MRIなどにより,それが可能になりつつある。

展望

自閉症の長期予後(1)

著者: 中根晃

ページ範囲:P.492 - P.498

Ⅰ.自閉症における予後調査の意義
 米国の精神医学者Kanner, L.(1943)25)が感情的接触の自閉的障害autistic disturbances of affective contactとして11例の症例を報告したことに始まる小児自閉症は,常にその予後が臨床家の関心の的であった。分裂病や躁うつ病などが,その予後や経過から定義されたのと異なり,小児自閉症(以下自閉症と略述)は症状論的記述によって定義されている。したがって,その定義に合致する小児が成人した時にどのような状態であるかを明らかにすることは自閉症の本質の解明に示唆を与えるものであることは疑問の余地はない。さらに,こんにちでは義務教育終了後の自閉症青年の処遇を具体的にどうするかを考えるためにもぜひ明らかにしておきたいという現実的意味をもつに至っている。
 一般に知られている自閉症の追跡調査としてはEisenberg, L. ら13),Rutter, M. ら39,40,60,61),Kannerら26〜28),DeMyer, M. K. 10)ら,Lotter, V. 41,42)のものがあって,それぞれ自閉症研究史上,大きな意味をもっている。Eisenberg, LおよびKanner13,26)のものは,いうまでもなく自閉症概念の創始者による自験例の追跡調査であるので,それ自体が自閉症概念に補足を加えたことになる。RutterらのものはMaudsley病院を訪れた患者を対象に,さらに同じ時期に同病院を訪れ,性,年齢,平均知能指数を一致させた非精神病性の脳障害児を統制群とした追跡調査であり,DeMyerらのものは同じく非自閉症性の障害児を統制群に選び,自閉症児群のほうも重症度や知的水準によって3群にわけ,それぞれの予後を多角的に解析したものである。これに対し,LotterのものはイングランドのMiddlesex州で行った疫学調査の対象例の追跡調査であって,一つのクリニックの症例という特定の一群ではなく,地域でのサンプリング調査ということで前2者とは異なった臨床的意味をもっている。これらはすべて,1970年代の初頭までのものであって,以後,こうした大規模な予後調査は下火になっている。しかし,その間には青年期,成人期になった自閉症についての広範な知見が蓄積されてきている。

内因性精神病の生化学(1)

著者: 大月三郎 ,   秋山一文

ページ範囲:P.500 - P.505

I.はじめに
 精神分裂病や躁うつ病などの内因性精神病は精神医学において最も重要な疾患である。それらの病態は依然,不明であるが脳内のなんらかの生化学的異常が推察されて今日に至っている。最新の神経科学の研究成果より,内因性精神病の病態を構成すると考えられる個々の神経伝達物質に関する生化学的知見は蓄積されつつあるが,内因性精神病がヒトの脳という非常に複雑な組織で起こっているため,解析が困難であり,研究の進歩がはばまれているというのが現状であろう。これまでの内因性精神病の生化学的研究の内容は大別して,①死後脳の分析,②脳脊髄液を中心とする体液の分析,③神経内分泌学的方法,④positron emission tomographyによるin vivoでの脳代謝,神経伝達物質受容体の解析などである。これらの研究成果を論ずる際に常に指摘される82)ことであるが,以下のようなことを慎重に配慮しておかなければならないだろう。第1は診断にかかわるものである。いうまでもなく,精神分裂病,躁うつ病はともに症候群であるといわれ,その生物学的異種性が指摘されている。多くの研究成果を比較するには,共通の診断criteriaが必要であるが,今日では,DSM-Ⅲ,RDCのような操作的診断法に基づいて臨床研究を行うことが大勢になりつつある。第2として,問題となる生物学的指標が状態依存性なのか素質依存性なのかを区別して考える必要がある。ここで生物学的指標とは,野村96)も述べているように「状態像あるいは素因に関連してしばしば認められるような生物学的変化」であり,症候論学的に規定された精神疾患の診断に直ちに対応するものでないことに留意しなければいけない。第3に,向精神薬などの医原性要因,性,年齢,さらに食物,環境要因などの諸条件を疾患群と対象群との間で比較し,差がないかどうか,各群内でこれらの要因(疾患群では罹病期間も含む)と問題となる生物学的指標との相関関係を検討する必要がある。第4として,体液(髄液・血液・尿)の生化学的指標により中枢の変化をとらえようとする方法は,自ずから限界があることを承知していなければいけない。内因性精神病の生化学的研究はいろいろな技術的問題のために困難を伴っていることは事実であるが,将来の研究面における技術開発によってその突破口が開かれることが期待される。本稿では,上記にあげた4つの研究内容を中心にこの分野での最近までの知見を概観した。

研究と報告

恐慌発作を有するうつ病の臨床的検討

著者: 杉原徳郎 ,   岸本朗 ,   水川六郎 ,   石黒忍 ,   松林実 ,   高田照男 ,   青山泰之 ,   挾間秀文

ページ範囲:P.507 - P.516

 抄録 恐慌発作を有するうつ病者について,うつ病と恐慌発作の関係,およびうつ病者で恐慌発作を有するものに対する疾病分類上の位置づけを検討する目的で,その恐慌発作の出現様式や臨床的,治療学的特徴などについて調査した。その結果,恐慌発作を有する躁うつ病者は全躁うつ病者の5.3%(26例)にみられ,恐慌発作を伴わないものとくらべて女性が多く,そのほとんどが単極型うつ病者であった。単極型うつ病者のみに限ってみると,恐慌発作とうつ病相出現の時間的関係から恐慌発作が先行するもの(13例)と,うつ病相が先行するか同時に初発するもの(11例)の2群に区分され,前者は後者にくらべて恐慌発作およびうつ病相の経過ならびに治療薬への反応が良好で,執着性格の比率が高かった。これに対し,後者では経過は不良で薬物治療に抵抗するものが多かった。これらの臨床背景から恐慌発作先行群は恐慌発作を有さないうつ病群と同質のものとして,一方うつ病相先行群はうつ病の病態を基礎にして,二次的に恐慌発作症状が惹起されたものとして理解された。

日本と中国における精神分裂病の妄想主題—比較文化精神医学的検討

著者: 藤森英之 ,   鄭瞻培 ,   木崎康夫 ,   蔡正奈

ページ範囲:P.517 - P.527

 抄録 現代の日本と中国の精神分裂病の妄想主題と社会体制や文化的伝統の違いを比較文化精神医学的に検討した。資料は東京と上海の同規模の公立精神病院の初回入院例(1981〜83)である(東京の112例=男53,女59;上海の129例=男70,女59)。両資料の相対的に高頻度の妄想には物理的被害と誇大妄想があり,心気や罪業妄想は低く,被毒妄想のみが上海で著しく高かった(χ2=12.97,p<0.001)。
 宗教妄想と憑依妄想には両国の社会体制と社会文化的背景の違いが鮮明に反映され,日本と中国の家族制度の相違(日本の核家族化と中国の大家族制度)と特に中国の家族「内」・「外」の共食の伝統が被毒妄想に影響し,中国の地域社会では一方で水平的なヨコの人間関係が密で,近隣の噂や監視を警戒し,他方で集団指導体制における国家指導者や軍人といったタテの垂直な対人関係への傾斜がみられ,前者が被害妄想に,後者が誇大と来歴否認妄想に関連することが示唆された。

Gilles de la Tourette症候群の精神医学的研究—(2)器質的要因について

著者: 斉藤幹郎

ページ範囲:P.529 - P.535

 抄録 DSM-Ⅲの定義を満たす17名のGilles de la Tourette症候群(GTS)の患者の器質的要因を検討し,また脳波異常を示しphenobarbital(PB)により軽快した2症例を提示した。そして6例(35.3%)にチックの遺伝負因を認めた。出産時に5例(29.4%)に問題があった。5例(29.4%)が左利きで2例は右利きへの矯正時とチックの発症が一致した。多動またはMBDは10例(58.8%)に見られ,4例(23.5%)に痙攣の既往があり1例はてんかんとの合併例と考えられた。筋伸展性の亢進が12例(70.6%)に,アレルギー症状が5例(29.4%)に見られ,うち2例でチック症状と負の相関が認められた。脊椎側彎が7例(41.2%)に見られた。脳波異常が11例(64.7%)にあり,CTでは10例中4例(40%)に異常が見られた。以上のことからGTSの器質的要因の特徴は非特異的異常の様々な組み合わせを示すことであると結論し,またPBによる軽快からGTSの異種性の可能性を推定した。

アルコール依存症の予防と治療的介入—教育的,集団療法的アプローチ

著者: 宮里勝政 ,   山城厚生 ,   杉本好行 ,   野田和男 ,   荒田真理子 ,   久田志津代

ページ範囲:P.537 - P.545

 抄録 大量飲酒者および酒害者とその家族を対象に毎月1回,教育セッションと自由討論セッションよりなる「アルコール家族教室」開始後2年間の内容を分析し以下の結果を得た。
 集団の特性:1)集団の凝集性はまず助言者側と自助団体指導者とその家族との間に形成され,新規参加者へと拡大した。2)適正飲酒からアルコール依存症まで広範囲の対象を含む。3)専門性の異なる多職種の関与が内容を豊かにする。4)教育セッションは知識の賦与,自由討論への導入,助言者側の積極的姿勢強化をもたらす。5)自由討論セッションでは集団療法的展開がみられる。

我が国のアルコール依存症患者の専門治療施設に関する調査—その1.アルコール専門病棟

著者: 樋口進 ,   村松太郎 ,   荒久保昭子 ,   石井恵理 ,   山田耕一 ,   村岡英雄 ,   丸山勝也 ,   河野裕明 ,   今道裕之 ,   小杉好弘

ページ範囲:P.547 - P.552

 抄録 我々は,我が国のアルコール依存症患者の専門治療施設を一定の定義にしたがって分類し,これらに関して一連の調査を行った。本稿ではこれらのうち,アルコール専門病棟に関する結果を報告する。
 アルコール専門病棟は,調査時点で43病院に存在すると推定され,うち39病院(50病棟)より回答を得た。調査は質問紙により,これらの病院,病棟,入院患者の概要および治療プログラムなどについて行った。

両側対称性大脳基底核石灰沈着と精神症状について

著者: 木村健一 ,   小原基郎 ,   阿部完市 ,   溝口藤雄 ,   尾原義悦 ,   小池順平

ページ範囲:P.553 - P.561

 抄録 Fahrの報告以来,両側対称性大脳基底核の石灰化は,いろいろの疾患で発見されている。Fahr病,副甲状腺機能低下症,偽性・偽性偽性副甲状腺機能低下症,Cockayne症候群6),放射線治療後,その他18,50)である。近年CT検査の発達により大脳基底核石灰化症例の発見されることが多くなり,無症状の者も含めて多くの疾患で見出されている。筆者は大脳基底核石灰化と精神症状について調査すべく,自験例5例と済生会川口総合病院CT室3,948例中の大脳基底核石灰化例22例,計27例を検討した。臨床診断は脳梗塞,高血圧,脳循環障害が最も多く12例で,パーキンソン症を呈するもの4例,副甲状腺機能低下症,甲状腺機能低下症,Fahr病各1例であった。症状として頭痛,頭重を訴えるもの11例で,精神神経症状としては,てんかん,心気症,うつ気分,めまい,嘔気などがあった。

Rud症候群の1例—精神症状を中心として

著者: 大島浩伸 ,   皆川正男

ページ範囲:P.563 - P.568

 抄録 非常にまれな疾患であるRud症候群と小児期に診断された症例が10年後の現在,特異な精神症状を呈しているので報告した。
 症例は23歳の男性で当院皮膚科受診中に家庭内暴力等を主訴として精神科を受診した。てんかん発作は現在認められず,知能指数は47である。様々な精神症状の発現については,知的発育障害とそれに伴う未分化な人格構造を基盤とした反応様態と考えられた。

L-Dopaの著効した脳卒中後遺症による病的笑いの1症例

著者: 中村清史 ,   石出隆男 ,   山田準子 ,   山内一長 ,   別府道徳 ,   矢崎俊二

ページ範囲:P.569 - P.573

 抄録 『病的笑い』は周囲の状況・刺激の大きさと不均衡で,本人にとっても自己の感情にそぐわない自動的・紋切型の笑いと定義されており,種々の器質性脳疾患や神経疾患に認められている。患者は65歳の女性。接枝分裂病で入院中脳卒中発作を併発し,失語症(全→運動性失語症)と四肢麻痺(右側により著明)を遺し,その後顕著な『病的笑い』が持続している。従来『病的笑い』は治療が困難とされていたが,最近L-Dopaが『病的笑い』に著効を示すという報告が得られている。我々もL-Dopaを投与したところ,極めて良好な経過を認めた。L-Dopa投与前後の髄液中のHVA値と5HIAA値をも測定したので併せて報告し『病的笑い』の責任病巣或は発生機序について若干検討を行った。

フェティシズムを呈した特発性副甲状腺機能低下症の1例

著者: 滝口直彦 ,   会川真理子 ,   羽藤邦利 ,   大谷輝信 ,   永江三郎 ,   石川義博

ページ範囲:P.575 - P.579

 抄録 フェティシズムを呈した特発性副甲状腺機能低下症の1例について報告した。症例は,30歳の男子。10歳時からおしめを盗んでは自慰にふけるようになり,次第に女性の下着も盗み始め,17歳時からはもっぱら女性の下着を盗んでは,それを身につけて自慰をし,性欲を満たしていた。身体的には,4歳まで歩行不能。8歳まで夜尿症のためおしめをしていた。17歳時からけいれん発作が出現し,抗てんかん薬で改善しなかった。24歳時に特発性副甲状腺機能低下症と診断され,ビタミンDやカルシウム等の服薬でけいれん発作は消失した。しかし,フェティシズムについてはなんら改善は見られなかった。
 本症例のフェティシズムの成立には,身体的要因ならびに心理社会的要因が密接に関連していた。すなわち,副甲状腺機能低下症による身体的諸症状は,両親の不和という状況下で母親の溺愛を招き,それはさらに,対人関係の発達を障害し,社会的適応を困難にした。特に,8歳時までしていたおむつが,父母離婚で,不安が高まった時に,移行対象的性質を持ち,本症例のフェティシズムの成立に大きな役割を果たしていたと考えられる。

短報

全身性の骨化傾向を認めた分裂病の1例

著者: 福西勇夫 ,   細川清 ,   馬場英三

ページ範囲:P.580 - P.582

I.はじめに
 近年,精神分裂病と前頭葉機能障害との関係が注目されている。とりわけ,精神分裂病の陰性症状は,前頭葉器質損傷患者にみられる前頭葉症状に極めて類似していると言われている。前頭葉器質損傷患者が,器質的症状を明らかに示さず,精神症状を前景とした場合,精神分裂病等の精神病と診断することが少なくないように思える。
 今回われわれは,陰性症状を主体とする慢性分裂病患者に,非常に高度な内前頭骨過骨症(hyperostosis frontalis interna)を認め,前頭葉症状を呈した1例を経験したので報告する。

脳梗塞後,持続的な地誌的障害を認めた1例

著者: 中村真理子 ,   佐藤能史 ,   堀内博彦 ,   芦田妙子 ,   竹上徹 ,   浮田義一郎 ,   中嶋照夫 ,   大谷亙

ページ範囲:P.583 - P.585

I.はじめに
 一般には一過性といわれる地誌的障害1)が,脳梗塞後,ほぼ恒常的にみられ,その他に物体失認,色覚異常等を呈した1例を経験したので報告する。

コンピュータ技術者と販売店員の精神保健—職種による違い

著者: 渡辺登 ,   増野純

ページ範囲:P.586 - P.588

I.はじめに
 近年,職場には技術革新や高年齢化,女性の進出など大きな変化が訪れている。このうちコンピュータで代表される技術革新によって,プログラム設計や膨大な情報量の入出力,計器の集中制御等に従事するコンピュータ技術者には,心身の健康障害がみられることがある1,3,6,7,12)。こうしたコンピュータ機器を相手とした技術者は,他の職種たとえば顧客を相手に商品を売る販売店員と比較して,精神健康がより悪い状態にあるのではないかと推測されるが,そうした実態に関する検討はなされていない。
 今回,我々はコンピュータ会社および販売会社に勤務する労働者へ精神障害のスクリーニングテストとして開発された調査用紙を配布し,機器あるいは人間を相手とする職種によって精神健康に差異があるかどうか調査したので報告し,若干の考察を加えたい。

急性薬物中毒によるアルファ昏睡に紡錘波の出現した1例

著者: 西岡和郎 ,   粉川進 ,   太田龍朗

ページ範囲:P.589 - P.591

I.はじめに
 近年,急性薬物中毒によるアルファ昏睡の予後は良好とする報告がみられる。われわれは三環系抗うつ薬と抗不安薬による急性薬物中毒の結果,紡錘波の出現するアルファ昏睡に陥ったが後遺症なく回復した症例を経験したので,経時的に記録した脳波所見を中心に報告し,アルファ昏睡の予後,脳波の性状について考察を加えたい。

微熱を主症状としたうつ病の2例

著者: 宮永和夫 ,   米村公江

ページ範囲:P.592 - P.595

I.はじめに
 うつ病の身体症状については種々報告されているが,微熱についての報告例は少なく,我々の知る限り松野ら7)や河野6)だけであって,あまり一般に認められる症状ではなかった。今回抗うつ剤および抗不安剤の投与によって抑うつ状態とともに微熱が改善した2症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

動き

国際神経心理学会印象記

著者: 渡辺俊三 ,   田崎博一 ,   田川浩一 ,   長田乾

ページ範囲:P.596 - P.597

 国際神経心理学会(International Neuropsychological Society:INS 1987)は1987年2月18日より21日までの4日間,首都ワシントンのヒルトン・ホテルでKenneth M. Adams, Ph. D. を会長に開催された。
 2月のワシントンはまだ寒く,大雪に見舞われることも稀ではないということであったが,学会中は素晴らしい好天に恵まれた。

第3回日本精神衛生学会印象記

著者: 浅井邦彦

ページ範囲:P.598 - P.598

 1987年11月13〜14日本精神衛生学会の第3回大会が,一番ケ瀬康子(日本女子大)会長,榎本稔実行委員会長のもとで開かれた。
 第一日目は一番ケ瀬会長の講演「居住環境と心の健康」が行われた。国際居住年にあたり,居住環境と心の健康の問題の重要性を強調された。WHOは国際居住年のテーマとして,ホームレスのためにシェルター造りをかかげている。世界的規模で貧困化が進み,失業と病気(アルコール中毒など)により,ストリートピーブルが増加し,更に精神病院に老人ホームから退院して帰る家のない人達が増えてくる問題のあること。そして日本では,一般住宅の狭さが問題で三世代同居が多く,老人ホームも一人当りの面積が,英国の1/3,スウェーデンの1/5であり,高齢者の自殺率が高いことは,居住環境と関係があり,個室化をすすめたホームで自殺が減少したなどのデーターを示し,居住環境の改善が心の健康にとって大切であることを強調し,都市計画などでも精神衛生の側からの積極的発言と関与が必要であるとまとめられた。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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