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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻5号

1988年05月発行

研究と報告

日本と中国における精神分裂病の妄想主題—比較文化精神医学的検討

著者: 藤森英之123 鄭瞻培45 木崎康夫67 蔡正奈8

所属機関: 1前東京都立松沢病院精神科 2現東京都立墨東病院神経科 3東京都精神医学総合研究所 4上海精神病防治院 5東京都精神医学総合研究所 6前東京都立松沢病院精神科 7現神奈川県積善会曽我病院 8上海第二医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.517 - P.527

文献概要

 抄録 現代の日本と中国の精神分裂病の妄想主題と社会体制や文化的伝統の違いを比較文化精神医学的に検討した。資料は東京と上海の同規模の公立精神病院の初回入院例(1981〜83)である(東京の112例=男53,女59;上海の129例=男70,女59)。両資料の相対的に高頻度の妄想には物理的被害と誇大妄想があり,心気や罪業妄想は低く,被毒妄想のみが上海で著しく高かった(χ2=12.97,p<0.001)。
 宗教妄想と憑依妄想には両国の社会体制と社会文化的背景の違いが鮮明に反映され,日本と中国の家族制度の相違(日本の核家族化と中国の大家族制度)と特に中国の家族「内」・「外」の共食の伝統が被毒妄想に影響し,中国の地域社会では一方で水平的なヨコの人間関係が密で,近隣の噂や監視を警戒し,他方で集団指導体制における国家指導者や軍人といったタテの垂直な対人関係への傾斜がみられ,前者が被害妄想に,後者が誇大と来歴否認妄想に関連することが示唆された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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