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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻5号

1988年05月発行

文献概要

研究と報告

フェティシズムを呈した特発性副甲状腺機能低下症の1例

著者: 滝口直彦1 会川真理子1 羽藤邦利1 大谷輝信1 永江三郎1 石川義博2

所属機関: 1八王子医療刑務所 2東京都精神医学総合研究所

ページ範囲:P.575 - P.579

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 抄録 フェティシズムを呈した特発性副甲状腺機能低下症の1例について報告した。症例は,30歳の男子。10歳時からおしめを盗んでは自慰にふけるようになり,次第に女性の下着も盗み始め,17歳時からはもっぱら女性の下着を盗んでは,それを身につけて自慰をし,性欲を満たしていた。身体的には,4歳まで歩行不能。8歳まで夜尿症のためおしめをしていた。17歳時からけいれん発作が出現し,抗てんかん薬で改善しなかった。24歳時に特発性副甲状腺機能低下症と診断され,ビタミンDやカルシウム等の服薬でけいれん発作は消失した。しかし,フェティシズムについてはなんら改善は見られなかった。
 本症例のフェティシズムの成立には,身体的要因ならびに心理社会的要因が密接に関連していた。すなわち,副甲状腺機能低下症による身体的諸症状は,両親の不和という状況下で母親の溺愛を招き,それはさらに,対人関係の発達を障害し,社会的適応を困難にした。特に,8歳時までしていたおむつが,父母離婚で,不安が高まった時に,移行対象的性質を持ち,本症例のフェティシズムの成立に大きな役割を果たしていたと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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