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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻7号

1988年07月発行

展望

老年期痴呆の構造と臨床類型(1)

著者: 室伏君士1 田中良憲1 後藤基1

所属機関: 1国立療養所菊池病院

ページ範囲:P.732 - P.738

文献概要

I.はじめに
 近年,高齢化社会への対応として,実態調査,地域対策,薬物療法,痴呆の原因研究などが,盛んになされている。これはこれとして意義も大きい。このなかで臨床的には,とくに痴呆の診断基準が注目されている2)。しかしこの診断基準は,痴呆の本態を問題にするよりは,痴呆の外的(現象的)特徴を,他の症状と鑑別すべく選択して指標としている。そして最近は痴呆の基礎研究や常識的対応に取り組むものが多くなって,これが安易に痴呆そのものの特性と考えられたりしている。さらに実用・操作主義のもとに,簡便にテスト・スケール化されて,痴呆の本態的なものと把握されているきらいがある。
 しかしこれに比して別の臨床的問題は,痴呆の内部的構造の解明や意義4,8,10,25)が,等閑視されていることである。この構造とは,痴呆の生物学的精神神経機能の機構と,痴呆の人間的なものの力動の機制からなるもので,痴呆の本態に近づくものである。これらの痴呆の構造は,その臨床・病理的把握はもちろんであるが,治療の目標(薬で動くものと治りにくいもの)あるいはケアのヒント(心理機制や精神神経機序による拠りどころ)を得るうえでも23),重視されるものである。またそれによる痴呆の臨床類型は,その疾患の経過と予後を含むので,これも痴呆の研究や治療では,心得ておくべきものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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