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巻頭言
国試ガイドラインと卒前教育
著者: 十束支朗1
所属機関: 1山形大学精神神経学講座
ページ範囲:P.838 - P.839
文献購入ページに移動新しい改定案で目を見張ったことは,総論と各論にわけられていて,前者は医学・医療総論として各科の総論の部分をまとめ上げた内容である。「ガイドライン改定マニアル」によると,「……基本的臨床知識・技能をより重視するため各科の総論部分を統合し,また,社会的諸問題にも配慮した内容の医学・医療総論を導入する……」とある。すなわちいままでの各科のガイドラインの総論の項目をオムニバスとしてまとめたものが医学・医療総論である。各論は医学各論(内科,外科,小児科)および9科のそれぞれ各論からなっている。従来は,各科目のガイドラインと学問体系とはほぼ重なっていた。大学の各講座は自己の学問体系に固執し過ぎるため,総論部分が切り離され各科の統合された総論部分が作り出されると,ガイドラインにある各科各論と各科の学問体系との整合性に疑問と不安が生じてくる。しかし,ガイドラインは,実地に医師の任務を果たすのに必要な事項を医師国家試験の「妥当な範囲」と「適切なレベル」を目安として整理されたものである。卒前教育では,各科の学問体系を学生に教えることも必要であろうが,今回の改正案の総論部分にみられるような学際的,集学的な仕組みで学ばせることが,実地医師を養成するのには大切な方法であると思う。とくに卒後教育では専門に徹してしまうし,仮りに各科をローテイトするにしても,卒前教育において少なくともプライマリーケアの理念を植えつけるためには,医学・医療総論という形式で教育がなされるべきであろう。今回の案は,そのような意味で大いに参考になると思う。
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