文献詳細
展望
地域精神保健活動の現状と展望(2)
著者: 蜂矢英彦12
所属機関: 1東京都立中部総合精神衛生センター 2精神医学研究所付属東京武蔵野病院
ページ範囲:P.840 - P.847
文献概要
かつて若菜145)が,「6本柱の中でMHC側が最も苦慮したのは技術指導・技術援助」と書いたように,今日でも事情はあまり変わらない。若菜が引用している「保健所とMHCは大局的にみて同程度の技術水準であり,もし,MHCに優位のものがあるとすれば,時間的,空間的なもので,単に精神衛生業務に対応できるというに過ぎない」という1971年当時の発言に筆者は必ずしも賛同しないが,精神衛生相談員にしても保健婦にしても,MHCと保健所との間で相互に異動があり,個人レベルではむしろ保健所に優れたベテランの活動家がいたりするのは当然であろう。しかし,精神保健専門職員ばかりの集団がこの業務に専念してなお,大局的に見て保健所と同水準にとどまるとすれば,そのMHCの存在価値もないわけで,質的・量的な改革が迫られていると解釈すべきである。
長年にわたって保健婦ばかりで地域精神保健活動を担ってきた東京では,先述のように保健婦の技術向上を生み出してきたが,一方,一部には他職種に対して排他的な風潮も見受けられる。精神障害者は保健・看護技術だけでは片付かない多面的な問題を抱えていることが多く,また,女性職員だけですべてに対応できるものでもない。東京にも男子のPSW・CPが精神衛生相談員として配置される必要がある。こういった東京の場合などでは,まず,保健婦以外の視点を持つ職種がいることだけでもMHCの意味があるし,中部総合MHCがデイケア,ナイトケア等の現場を持っていることも役立つはずである。
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