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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻8号

1988年08月発行

文献概要

研究と報告

精神障害を呈した砒素ミルク中毒—被災者8例の臨床的特徴

著者: 水川六郎1 梅沢要一2 稲垣卓2 福田武雄3 山根巨州4 常松篤5

所属機関: 1鳥取大学医学部神経精神科 2島根県立湖陵病院 3松江赤十字病院 4島根県立中央病院 5常松小児科医院

ページ範囲:P.857 - P.864

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 抄録 昭和30年に発生した砒素ミルク中毒事件から30年余りを経過したが,思春期,青年期を経た当時の被災者の精神障害については不明な点が多い。この点を明らかにするために島根県内における280名の認定被災者のうち,てんかん,精神遅滞を除く精神障害者8名について,その臨床的特徴を検討した。診断名は精神分裂病6名,躁うつ病2名で,全例に身体所見,知的能力,脳波,CT所見などには著明な障害を認めなかった。分裂病者のうち5名は発病以前に不安,心気,強迫などの神経症症状が認められ,4例は5年ないし10年を経過していた。分裂病発病後は幻覚妄想が治療により比較的早期に消失するのに対し,神経症症状は持続し,社会参加への障害となっていた。これらの症例では,砒素ミルク飲用による発育期の脳への障害や,幼小児期の身体的不調による不安感,自律神経の脆弱性が神経症症状形成に関与し,それらが分裂病症状を修飾したものと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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