研究と報告
精神分裂病患者における学習過程とP300成分—frequent P 300成分出現におよぼす方略教示の影響
著者:
福田正人1
永久保昇治2
中込和幸3
斎藤治1
平松謙一1
丹羽真一1
林田征起1
亀山知道4
伊藤憲治5
所属機関:
1東京大学医学部精神医学教室
2葛飾橋病院
3帝京大学医学部精神神経科学教室
4東京逓信病院健康管理センター
5東京大学医学部音声言語医学研究施設
ページ範囲:P.877 - P.883
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抄録 精神分裂病患者の方略学習過程とP300成分に代表される中枢機能との関連を検討する予備研究として,難易度の高い三音弁別課題遂行時の事象関連電位を記録した。対象は20歳代の精神分裂病患者5例。刺激は970Hz(1/6),1,000Hz(4/6),1,030Hz(1/6)の純音で,低頻度刺激音の一方を目標として反応を求めた。脳波はFz,Cz,Pzから単極導出した。正常者が採用する「中間音を基準として用いる」という方略の口頭での教示により,4例では,主観的には方略を採用できたにもかかわらず,課題遂行成績や反応時間の改善は認められなかった。また,健常者において高頻度非目標音に対して認められたCz優位のP300成分("frequent P 300成分")は,方略教示前後とも出現しなかった。一方,自ら方略を発見できた1例においては,方略の発見に伴い課題遂行成績の有意な改善,反応時間短縮の傾向が認められ,frequent P 300と思われる成分が出現した。