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文献詳細

雑誌文献

精神医学30巻9号

1988年09月発行

文献概要

動き

わが子への医療拒否は児童虐待か?

著者: 池田由子12

所属機関: 1聖徳学園短大保健センター 2日本大学医学部精神科

ページ範囲:P.1052 - P.1053

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 精神衛生の立場から児童虐待の展望を本誌に書いたのは1977年であったが,その後児童虐待の存在は次第に知られるようになってきた。児童虐待の一つのタイプとして,保護の怠慢・拒否(neglect)があるが,これは捨て子や,親が子どもに必要な衣食住の世話や医療を与えないことをいう。このneglectの特殊な事例として「エホバの証人」派の信者である親が,子どもの治療に必要な輸血を拒否する事件が外国でしばしば報告されている。わが国でも同様の事件が起こったのは,1985年のことであった。
 「エホバの証人」(Jehovah's Witness)の本部は米国にあるので,私は当時米国の専門家たちにこのような事例への対応をたずねてみた。その代表的な回答は次のようなものであった。「精神的に責任能力のある成人が,生命に危険のある状態で輸血を拒否するときは,その人は拒否の陳述に署名をし,その結果がどうなろうともそれは自分自身の決定による。しかし,もし子どもや精神的に責任能力のない成人が,生命に危険があり,輸血が必要なのに,親や監護者がそれを拒むときは,医師はその必要性を宣言し,裁判所の命令を得て輸血を行い得る。その時裁判所は法的監護者として機能する」というものであった。当時,私の感じた疑問は,医療機関にまで達しない事例や専門家に気づかれない事例があるのではないかということであった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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