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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻10号

1989年10月発行

シンポジウム 精神障害者の責任能力

最近のわが国における責任能力判定の傾向

著者: 中田修1

所属機関: 1東京医科歯科大学

ページ範囲:P.1097 - P.1102

文献概要

I.はじめに
 精神病の人,知能の低い人,年齢的に幼い人などが,通常人が行えば罰せられるような行為を行っても,罰せられなかったり,刑が軽減される。これはわが国でも外国でも,大昔から行われている習慣であり,法律でもそのように規定されている。その訳は,このように,精神が障害されたり,精神の発達が未熟な人は,自らの行為の是非善悪を判断したり,判断に従って自らの行動を制御する能力が失われているか,著しく減退していると考えられるからである。この,行為の是非善悪を判断したり,判断に従って行動を制御する能力は,法律的には刑事責任能力,あるいは単に責任能力といわれている。そして,この能力が失われている場合には,責任無能力と,わが国の刑法では心神喪失といわれている。責任能力が著しく減退している場合には,限定責任能力と,わが国の刑法では心神耗弱といわれている。責任無能力のときには,無罪が言い渡され,限定責任能力のときは原則として刑が軽減される(わが国の刑法では必ず刑が軽減される)。
 それでは,どういう精神の障害や精神の未発達の場合に責任無能力あるいは限定責任能力と認定されるのか,という具体的な問題になると,なかなか難しい事情がある。ここでは精神の障害の場合だけを取り上げる。私どもにとっては,このような判定の際に,なるべく単純明快な原則があれば,非常に望ましい。今日では,コンピューターがめざましく発達し,複雑な計算も容易である。それでも簡単なことに越したことはない。たとえば,精神病であれば,それだけで責任無能力であるということになると,どんなに単純明快であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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