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シンポジウム 精神障害者の責任能力
精神科医における「鑑定人」と「治療者」
著者: 西山詮1
所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.1103 - P.1110
文献購入ページに移動I.はじめに
これまで刑事司法精神鑑定といえば,責任能力の問題がその主要な部分を占めていた。たしかに,責任能力の有無の判断によって,ただちに人の有罪・無罪が決定されるのであるから,この問題が重要でないわけはない。しかし,筆者は少し前から,精神鑑定のこうした実体法的な側面のほかに,鑑定の手続法的な面にももっと注目しなければならないと考えるようになった。
責任能力の精神鑑定は,血痕や傷痕の鑑定と違って,鑑定人が被疑者や被告人をいわば丸ごと調査するのであるから,その際,侵してはならない被鑑定人の権利に留意するほか,通常の診療とは異なった信頼関係の形成に配慮しなくてはならない。そうすることがまた,鑑定人たる精神科医について自己反省する機縁にもなるのである。
これまで刑事司法精神鑑定といえば,責任能力の問題がその主要な部分を占めていた。たしかに,責任能力の有無の判断によって,ただちに人の有罪・無罪が決定されるのであるから,この問題が重要でないわけはない。しかし,筆者は少し前から,精神鑑定のこうした実体法的な側面のほかに,鑑定の手続法的な面にももっと注目しなければならないと考えるようになった。
責任能力の精神鑑定は,血痕や傷痕の鑑定と違って,鑑定人が被疑者や被告人をいわば丸ごと調査するのであるから,その際,侵してはならない被鑑定人の権利に留意するほか,通常の診療とは異なった信頼関係の形成に配慮しなくてはならない。そうすることがまた,鑑定人たる精神科医について自己反省する機縁にもなるのである。
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