文献詳細
シンポジウム 精神障害者の責任能力
文献概要
I.はじめに
昨年7月1日施行の新精神保健法は,その施行とともに新たな問題点を投げかけている。とくに,「精神に障害をもつ者」が犯罪を行った場合,同法によって取扱うか,それとも諸外国でみられるような刑事法的取扱いをするかという点については大変深刻な状況になっているといえよう。けだし,同法は,この点に関して,旧法を何ら変更するものではなく,むしろ,旧法時代の運用状態をそのまま追認し,医療現場の治療上の具体的な疑問に何ら答えることなくスタートしたからである1)。
私は,長年,刑事法の視点から,重大な犯罪(たとえば,殺人,放火,強盗,強姦,重傷害,さらに幼女などに対する重い強制わいせつなど)を行った上,さらに,通常の精神病院での取扱いの難しい精神障害者に対しては,刑事司法のルールに則り,とくに裁判官によるスクリーニングを経て,何らかの特殊病院(病棟)または施設において治療ないし処遇を行うべきであると主張してきた2)。
昨年7月1日施行の新精神保健法は,その施行とともに新たな問題点を投げかけている。とくに,「精神に障害をもつ者」が犯罪を行った場合,同法によって取扱うか,それとも諸外国でみられるような刑事法的取扱いをするかという点については大変深刻な状況になっているといえよう。けだし,同法は,この点に関して,旧法を何ら変更するものではなく,むしろ,旧法時代の運用状態をそのまま追認し,医療現場の治療上の具体的な疑問に何ら答えることなくスタートしたからである1)。
私は,長年,刑事法の視点から,重大な犯罪(たとえば,殺人,放火,強盗,強姦,重傷害,さらに幼女などに対する重い強制わいせつなど)を行った上,さらに,通常の精神病院での取扱いの難しい精神障害者に対しては,刑事司法のルールに則り,とくに裁判官によるスクリーニングを経て,何らかの特殊病院(病棟)または施設において治療ないし処遇を行うべきであると主張してきた2)。
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