研究と報告
全般性チックと自閉症
著者:
金生由紀子1
太田昌孝1
永井洋子1
所属機関:
1東京大学医学部附属病院精神神経科
ページ範囲:P.1261 - P.1268
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抄録 しばしば全身に及ぶ,複合性で重症のチックを音声チックの有無にかかわらず全般性チックと定義した。自閉症の経過中に全般性チックを発症した5例を報告した。最初に,チック症状と自閉症児に多くみられる常同運動との相違点を明確にし,チック症状の随意的抑制の基準を提案した。自閉症児ではトゥレット障害の発症が発達の指標になるという報告があるが,この5例では全般性チックの発症で発達の促進や予後の改善はなかった。全般性チックの症例は,チック症状自体が重症なうえに,自閉症児の中でも異常行動が豊富で,社会適応上も重症であった。薬物療法でチック症状はかなり改善し,社会適応も一定程度改善した。全般性チックの概念は,DSM-Ⅲ-RやICD-10のトゥレット障害(あるいは症候群)のうち重症なものとその近縁の比較的重症なチックをまとめ,チック症に薬物療法を適用する指針を与えることができ,最新の診断基準と比べて有用であることを示した。