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緩徐に寡動傾向を呈した大脳基底核石灰化を伴うDown症候群の1例
著者: 堤学1 数川悟1 倉知正佳1
所属機関: 1富山医科薬科大学精神神経医学教室
ページ範囲:P.1311 - P.1315
文献購入ページに移動 抄録 幼少時より重度の精神遅滞と動作の緩慢があり,青年期に入って寡動傾向が目立ち始めたDown症候群女子の1例を経験した。初診の30歳時,筋強剛や深部反射の亢進などの神経学的異常があり頭部CTを施行したところ,尾状核頭部を中心とする左右対称性の大脳基底核石灰化が認められた。血液電解質および副甲状腺機能にとくに異常はみられず,治療として抗パーキンソン病剤を使用したが,l-dopaに一時的に反応したのみで明らかな効果は得られなかった。LH-RHおよびTRH負荷テストにおける異常反応や終夜睡眠脳波でのspindleのprolongationには基底核の石灰化が関連すると考えられた。さらにこの石灰化の原因として循環不全を示唆する臨床症状や理学所見が認められた。本例では大脳基底核石灰化がdopamine伝達に障害をもたらし寡動などの臨床症状が出現したと推定された。
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