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秋田県内4医療機関にみる長期在院分裂病患者の実態—社会復帰の視点から
著者: 近藤重昭1 久場政博2 新山喜嗣2 玉川純雄3 水俣健一3 小木曽洋三3 七海敏仁3 檀原暢4 稲村茂4 林進5 湊浩一郎6 稲庭毅6 橋本誠6
所属機関: 1秋田県精神術生センター 2公立角館総合病院神経精神科 3由利組合総合病院神経精神科 4笠松病院 5大館市立総合病院神経精神科 6市立秋田総合病院神経精神科
ページ範囲:P.189 - P.195
文献購入ページに移動精神分裂病は慢性化しやすく,治療もまた長期化する。しかも慢性期の欠陥状態は薬物の効果が余り期待できない病態であることが経験される。したがって,慢性分裂病患者の社会復帰の可能性とその限界について検討しようとするとき,欠陥状態にある患者固有の自己調整力・適応力の様式を考えた治療的対応と患者と環境間の精神力動から病態を左右する外的諸条件を改善する処遇が問題となる。両視点は精神障害者の社会復帰対策にとっていわば車の両輪のごときものである。共同研究に際して,我々はこのことをまず確認し合うとともに,前提条件の一つとして共通の分裂病観に立つようにした(実際には,G. Huberグループの提唱する精神分裂病モデルを学習した)。本稿は長期在院分裂病患者を取り巻く外的諸条件についての報告に限られるが,患者をいかに処遇すべきかの評価は検者の疾病観に強く依存するからである。
慢性分裂病を主にした長期在院患者の実態に関する報告はこれまでも少なくはないが,総じて静的な現状分析が多いように思う3,4,8)。これに対して,我々は退院を阻害する外的諸条件,退院可能な患者に必要とされる中間施設の様態,さらに医療費からみた長期在院の問題点など,より動的な分析を試みた。
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