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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻3号

1989年03月発行

文献概要

研究と報告

自閉症と感情障害—抑うつ状態と軽躁状態を繰り返した年長自閉症の1例

著者: 小林隆児13 村田豊久2

所属機関: 1福岡大学医学部精神医学教室 2村田クリニック 3大分大学教育学部

ページ範囲:P.237 - P.245

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 抄録 思春期に入ってから強迫症状が出現し,さらには抑うつ状態と軽躁状態を繰り返した現在21歳になる自閉症者の1例を報告した。本症例は筆者らが幼児期から経過を観察しているが,10歳から強迫症状が出現し,次第に無気力になるとともに白日夢,制縛状態などを呈するようになり,さらには抑うつ状態と躁状態を繰り返すまでに発展していった。こうした症状の推移を思春期の精神発達の視点からながめると,思春期に入ってから次第に自立の欲求や性衝動が高まっていったが,自閉症児のもつ適応性の困難さ故に病的退行が促進されるとともに依存欲求が強まっていった。しかし,アンビバレントな心性が強く,強迫的防衛を繰り返しながら,対象喪失を繰り返す度に抑うつ状態を呈していたと推定された。さらに本症例で特徴的であったのは,強迫と抑うつが極めて密接に関連しながら推移していたことから両者の力動には密接な関連がうかがわれたことであった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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