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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻3号

1989年03月発行

紹介

フランスの精神医療—国際的な共同体運動・ラルシュ

著者: 太田博昭1

所属機関: 1パリ・サンタンヌ病院

ページ範囲:P.319 - P.325

文献概要

I.はじめに
 フランスの精神医療といえば,これまでSectorisation(地区化)を中心とする地域精神医療が注目の的であった。1960年代に国家政策として本格化した"地区化"を,この国の表看板とするなら,その影に隠れてほとんど言及されることはなかったが,着々と発展しているもう一つの運動がある。地区化政策が軌道に乗り始めた1964年8月,1人のフランス系カナダ人Jean Vanierと精神障害者が2人,パリの北方約80kmにある小さな村,Trosly-Breuil(Oise県)に住みついた。これが後のラルシュ共同体の始まりである。
 Jean Vanierは精神科医ではない。カトリックの信仰は厚いが,神父でもない。カナダ・ケベック州に生まれ,旧仏植民地時代のケベック総督を家系に持つ彼は,哲学,歴史学を修めた後,フランス各地の精神病院を訪れ,障害者と親しく交わるようになる。前世紀から延々と続いてきた収容主義が,未だ,地区化政策による地域精神医療の流れに取って替わられる以前のこと。当時のフランスの精神病院ばかりでなく,世界中の施設を訪れて,そこで出会った信じ難い光景が,彼の共同体運動の深い動機になっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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