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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻4号

1989年04月発行

文献概要

巻頭言

神経化学が作ったアミンプレカーサー療法

著者: 中嶋照夫1

所属機関: 1京都府立医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.334 - P.335

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 精神神経疾患の薬物療法の発見ならびに開始はかなり偶発的なものから起こっている。精神科医療において本格的薬物療法の黎明をもたらしたクロールプロマジンの開発は外科医ラボリーの発想によるし,しかも薬物療法にpessimisticであった精神科医にこの薬剤を使用させたのも彼の熱意による。そして,クロールプロマジンの登場はそれまで精神の座として研究の対象から外されがちであった脳に対する禁制を解き,以後急激に脳研究が盛んになって行った。同時に種々の向精神薬剤の開発と相俟って,精神神経疾患の病因あるいは病態因に関して多くの仮説を生み,精神医学の生物学的志向を作ってきた。
 このような流れの中で逆に基礎科学,とくに神経化学を基盤として開発された治療法がパーキンソン病のL-ドーパ療法である。1817年パーキンソンは振戦麻痺(1888年シャルコーがパーキンソン病と命名した)を疾患単位としたが,その目的を「疾病の原因と本態を探求するため病理解剖学的検索を行っている人達に対し,是非ともこの疾患に注意を向けていただくためである」としている。そして,病理解剖学的検索の結果,基底核(尾状核,被殻,淡蒼球)を中心とした関連領域の変性が主体であることから,錐体外路系の疾患であることが明らかにされた。しかし,1950年頃までは基底核の機能は全く未知であり,したがって,神経病理学の大家であったグリーンフィールドは1955年に発表した彼のパーキンソン病に関する病理学的研究の総説を「解剖学的,病理学的研究ではこの疾患の解明はできない。その解決は酵素化学あるいはその他の新しい研究分野に委ねなければならない」と結ばざるをえなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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