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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻4号

1989年04月発行

文献概要

特別講演

分裂病経過予見因子としての初期症状

著者: 池村義明2 元村宏3

所属機関: 1Psychiatrische Klinik der Universität 2美原病院 3北野病院神経精神科

ページ範囲:P.431 - P.439

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 クレペリンの早発性痴呆Dementia praecoxの概念をよりどころにして,原則的に分裂病の予後は良くないとするのは,正しくないことが最近の数多くの研究によって証明された。恐れられている"痴呆状態"が分裂病の確かな終末状態として必須のものではないことは医師でさえ必ずしも分ってはいない。ただ症例のおよそ3分の1では認知能力や力動的エネルギー水準の相当の喪失を考慮しなければならず,その結果彼らの病前の社会的レベルや人格水準を維持する生活はもはや不可能となるであろう。Wingの意味での"新しい慢性患者"はこの患者群に属する。
 ドイツ語圏では特にM. Bleuler(1972),CiompiとMuller(1979),G. Huberとその共同研究者達(1979)により予後研究が行われ,その中で分裂病疾患の経過の良好なものが報告されている。初期症状から予後を判定する基準を立てることが出来る経過研究は患者にとって一つの重要な意味をもっている。医師はそのような予後判定基準をもとにして今後の患者の生活設計に関して患者と話し合い,将来を考えた薬物治療を計画することができる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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