研究と報告
不良行為少年の有機溶剤吸引
著者:
渡辺登1
小松秀邦2
所属機関:
1国立精神・神経センター精神保健研究所
2国立武蔵野学院
ページ範囲:P.487 - P.494
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抄録 昭和57年から61年までの5年間に国立教護院へ入院した男子少年について,有機溶剤吸引少年と非吸引少年とに大別し,不良行為や家庭環境等を比較することによって,有機溶剤を吸引する不良行為少年の概略を明らかにしようと試みた。(1)入院少年270人(平均年齢13.6歳)のうち有機溶剤吸引が確認されたのは143人(53.0%)で,吸引開始年齢は平均で11.5歳であった。(2)吸引形態は集団吸引がほとんどで,吸引少年の91.6%は非行集団とかかわっており,非吸引少年より統計学的に有意に多かった。(3)入院少年のうち吸引少年の占める割合は59年の74.5%を最高として,年ごとに低下していた。(4)吸引少年は非吸引少年よりも自動車・バイク盗や恐喝,喫煙,飲酒などの不良行為を統計学的に有意に多くなしていた。(5)吸引少年及び非吸引少年とも実父母の揃っていたのが40%に満たず,養育態度や経済状態も不良であった。吸引少年は非吸引少年より兄姉の有機溶剤吸引が統計学的に有意に多かった。(6)不良行為少年たちが有機溶剤を吸引するに至った経緯について検討を加えた。