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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻5号

1989年05月発行

研究と報告

抗悪性腫瘍剤carmofurによる白質脳症と考えられた1例

著者: 生地新1 木村由里1 矢崎光保1 十束支朗1

所属機関: 1山形大学医学部精神神経医学講座

ページ範囲:P.511 - P.518

文献概要

 抄録 経口的な抗悪性腫瘍剤carmofur投与中に重篤な中枢神経症状を示した39歳の女性の症例について,その臨床経過を報告した。
 症例は,乳癌の肺転移巣の切除5カ月後に,carmofur 600mg/日を投与され,投与50日後に異常行動を示し,1週間で寝たきりの状態となった。入院時の状態像は,睡眠覚醒リズムが保たれて,日中開眼しているにもかかわらず,呼びかけ等には反応がなく,広義の無動無言症あるいは失外套症候群と考えられた。CT上,白質のdensityの低下が認められ,特に側脳室前角周囲の低下が目立った。臨床所見とCT所見から,carmofurによる白質脳症と診断された。患者は,入院後,徐々に意志を示せるようになり,会話・歩行が可能となった。しかし,知能の低下が入院10カ月後にも残存し,前頭葉症状群と考えられる意欲の低下した状態も持続していた。その時点の局所脳循環検査では,脳全体の血流の低下が認められ,特に前頭部で低下が著しかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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